じっくり読みたい「イタリア・ロマネスクへの旅」


木曜日, 8月 26th, 2010

じっくり読みたい「イタリア・ロマネスクへの旅」


Pisa(ピサ)ドゥオモ広場

「イタリア・ロマネスクへの旅」。
この本は、イタリア各地のロマネスク建築の教会や修道院を訊ね歩いた記録、及び解説である。
新書でカラー写真も豊富なので、気軽に手に取って読んでみたいと思わせる本ではあるが、、、
実際のところ、軽く読み流せる内容ではなかった。。

この本の著者の池田健二氏は、フランス中世史、中世美術史を中心に研究をしている。
建築に関して割と専門的な用語が頻繁に出てくるので、真面目に読んでると時間がかかる。
正直、途中で読み飛ばしたくなったりもした箇所もある。
でもこの本には、著者の、ロマネスク建築に対する深い憧憬と敬意の気持ちが詰まっている。
だから、こちらとしても真摯な気持ちで向き合いたいと思い、がんばってじっくり読んだ。

Pisa(ピサ)Piazza Duomo

イタリアのロマネスク建築と言えば、自分はピサとルッカくらいしか思い浮かばなかった。
(実際に訪れてこの目で見たのもそれくらい)
しかしこの本によれば、イタリアの北から南まで、聞いたこともない辺鄙な土地に、
珠玉のロマネスク様式の建造物が散らばっているのだ。

例えば、ロンバルディア州カルニッツォーロ山の山道をあえぎながら一時間半かけて
歩かなければたどりつけない、サン・ピエトロ・モンテ教会。
そんな、ガイドブックには決して載っていない教会や修道院が多く紹介されている。

Lucca(ルッカ)ドゥオモ

そして、この本を読むと、ロマネスクの本質らしきものが掴める気がする。

唐草文様、ロゼット、戯れる動物と植物、有翼のライオン、グリフォン、怪物、鳥、
人魚、ユニコーン、ケンタウルス、狩りをするディアナ。
自由で豊かな発想に溢れたモチーフ。朴訥でプリミティブな表現・・・

こういった細部のモチーフにまつわる解説を繰り返し読んでいたら、それまで自分の中で
曖昧だったロマネスク美術の輪郭が、くっきり浮かび上がってくる気がした。
ロマネスク美術には、時に稚拙さもありながら、合理性を重視したルネッサンス以前の、
プリミティブな力強さと、優雅で愛すべき要素が詰まっている。

そしてこの本には何よりも、そんな愛すべきロマネスクの遺産を残した当時の建築家や彫刻家、
さらにその建築に寄り添って生きた市井の人々に対する敬愛の気持ちが込められている。

・・・などとやたら固い言い方をしてしまったが、平たく言うと、読んでいると
「この人(著者)、本当にロマネスク建築が好きで、愛してるんだな」というのが分かるのだ。

誰にでも勧められる本ではないが、この本を読む人がそのエッセンスを受け取ることが
できたとき、清々しい気持ちになれることは間違いない。

イタリア・ロマネスクへの旅
池田健二著
中央新書刊


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